567 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 18:34:26.77 ID:DsejQWOEO ここは銭湯、否、戦場。 あの戦いが始まって早二時間が経過しようとしていた。 マリオ「マンマ…ミーア…マ…ン…マ…」 キノ五郎「カシュ…カシュウウ…」 限界なんてとっくに超えている。それでも、それでもなお。彼らは闘う。 答えなど有りはしない。ただ己の信念の欲するがままに闘っているのだ。 568 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 18:34:37.01 ID:qVC7Cpg+O 期待! 569 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 18:41:57.35 ID:Bfd+RG//O キター(((((( ;゚Д゚))))) 571 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 18:44:26.28 ID:pLY2BEOIO ( ゚Д゚ )き…て…る…? (⊃Д⊂)ゴシゴシ ( Д ) キテル━━━━━━(゚Д゚)━━━━━!! 572 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 18:51:16.89 ID:DsejQWOEO 二時間が経過したその時、天秤はキノ五郎に傾いた。 マリオ「マンマ…マンマミ……アアアアアアアフゥオオオオオオァアアアアアア!!!!」 なんとあまりの暑さにマリオが発狂したのだ。 マリオは凄まじい勢いで水風呂に飛び込み、湯船の水のおよそ半分を飲み干した。 キノ五郎は両手を天井に掲げ、誇らしげな表情でサウナルーム(戦場)から出て来た。 キノ五郎「ゼェゼェ…危うくケフィア…糞…干しキノコになるところだったぜ…ゼェゼェ。       とにかく俺の…勝ちだ!うおおおおおおお!!!」 キノ五郎の雄叫びが深夜の銭湯に響き渡った。 573 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 18:52:34.28 ID:qNgWPSaZO 熱いな 576 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 19:04:47.13 ID:DsejQWOEO 二人は勘定を済ませて銭湯を出ていった。 何時間いてもワンドリンク120円。実に魅力的な銭湯だ。 まるでカラオケのような型式だ。 マリオ「マジでやばかった〜死ぬかとおもたわ!マンマミーア」 キノ五郎「おいキャラおかしいぞ。頭の中まで煮えちまったのか?w」 マリオ「うるさいですわい!俺は平気だラッシャイ!」 キノ五郎「ちょw熊八ww」 そんな馬鹿な話をしながら家路を辿りキノ五郎はマリオの家までついて来てくれた。 キノ五郎「じゃあまた明日な!」 明日とは言っても既に今日の話だ。寝て起きた所が明日。彼等の中ではこうだった。 マリオ「今日は最高に楽しかったです。本当にありがとうございます。」 マリオは深々と礼をして、家に入って行った。 578 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 19:14:12.67 ID:DsejQWOEO キノ五郎「最近あいつ元気だな。ずっとそのままでいてくれよ。」 キノ五郎にとってマリオは大切で、マリオにとってもキノ五郎は大切であった。 絆の一言では片付けようのないもっと内側から染み出てくる大きな何かがあった。 この町で職場以外の付き合いがどれほど重要かは二人ともよく知っている。 大衆の波に乗らなくては生きていけない、人は一人では二人にかなわない。 彼等は金も名誉も持っていない。 しかし二人の間はそれで良かったのだ。 584 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 19:30:48.23 ID:DsejQWOEO マリオ「ただいま〜。」 ヨッシー「でってぃう。」 テテッテッテテットゥルルル♪ マリオ「あれ、電話が鳴ってる。こんな時間にいったい誰が…」ガチャ 電話なんてもう何年も鳴ってない。 ウチの電話はいつの日からか鳴らずの電話になっていた。 俺は小さな不安を感じつつも受話器を耳に掛けた。 マリオ「もしもし。」 ワリオ「よう。」 586 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 19:37:08.79 ID:5qSYTC7HO ワリオキタ━━━(゜∀゜)━━━!! 587 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 19:40:54.78 ID:EmP4BfZd0 俺だよ!ワリオだよ!! 589 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 19:46:05.23 ID:DsejQWOEO 電話の主はワリオだった、彼は取り立て屋で 俺の生活上溜まってしまった借金を取り立てようとしていた。 俺は彼と町で会う事があり、その度に酷く問い詰められている。 ワリオ「マリオちゃんよお…借金いつになったら返済してくれんの!ええっ!!!」 マリオ「も、もう少しだけまっ…」 ワリオ「その台詞は聞き飽きた!ウチの会社も困る訳よ。      あんまし遅いと家まで行ってやるからよ!覚悟しとけよウンコ屑!!」 ガチャ!ツーツー… マリオ「金…。」 キノコ景気が終わってしまった今、借金を返すあては無い。 孤独と闘い金をあさる毎日。 いつものことだと自分に言い聞かせて寝床についた。 591 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 20:01:01.21 ID:DsejQWOEO 丸く切り抜かれた小さな窓から光が差し込んでいる。 ピーチ「ふわわ…もう朝だわ。」 孤児キノコ1「お姉ちゃんおはよう!」 ピーチ「やだわお姉さんだなんて///おはよ。」 お世辞にもそんな歳ではない、しかしこの子はそう言ってくれた。 孤児キノコ2「ねぇねぇボールあるからさ、遊ぼ?」 ピーチ「良いわよ。」 起きてすぐは辛かったが、子供達の事を考えると、 こんな願いくらいは聞いてあげたかった。 それからしばらくの間、四人の子供達と遊んだ。 594 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 20:11:17.77 ID:DsejQWOEO ピーチ「それぇ!」 孤児キノコ3「お姉ちゃんだけ背高くてずるい〜!」 孤児キノコ4「負けないぞぉ!」 子供達の無垢な瞳はいつだって真直ぐだ。 大人になるにつれて周りを気にしたり目の前の物から逃げようとしたりしてしまう。 誰しもが通過する子供時代はなんて素敵な物なんだろうと改めて思った。 子供達はその大きな瞳み映る小さな世界をただ単純に受け止め。 何を不幸ととることも無く、暖かで単調な日常のリズムに身を浸している。 ゲームの中のように、子供がいつまでも子供でいられたならばなんと幸せなことか。 599 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 20:22:26.05 ID:DsejQWOEO 一時間程遊び、それからあたしは荷物を整えて玄関に立っていた。 孤児キノコ1「お姉ちゃんもう行っちゃうの…?」 ピーチ「ごめんね。行くところがあるのよ。いつかまた来るからね。」 いつか、等と嘘みたいな約束を交わした。出来る事ならまた来たい。 そうだ…マリオがあの事件のままならここに逃げよう。 いっその事ここで暮らしても悪くないわ。 ノコ爺「辛くなったらいつでも来なさい。」 ピーチ「ありがとうございます。」 まるで家族のようだった。ここはなんて暖かい場所なんだろう。 600 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 20:27:09.31 ID:DsejQWOEO 孤児キノコ2「お姉ちゃん、その王冠欲しい!」 孤児キノコ4「こらダメでしょ、あれはお姉ちゃんの物でしょ。」 孤児キノコ2「だって…お姫様みたいで可愛いんだもん…グスン。」 ピーチ「いいわよ、あげるわ。一日泊めてくれた御礼よ。はい。」 ピーチはそう言うと孤児キノコ2の小さな頭に王冠を優しく乗せた。 するとホクホクとした笑顔で「ありがと」と御礼を言われた。 あんな役者用の玩具の王冠なんかで笑ってくれる人がいるのなら、 喜んで差し出そう、子供達の笑顔ではしゃぐ様子には母性本能をくすぐられる。 606 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 20:42:32.69 ID:DsejQWOEO ピーチ「そろそろ行きますね。」 木の扉を開けたとたん吹き込んで来た冬の風。 吹き荒れる風の音はあたしを呼んでいるように聞こえた。 ノコ爺「キノコの神様は最後まで諦めなかった者に幸せを与える。     かつて写真の女性の夫が口癖の様に言っていた言葉じゃ。     そなたも肝に命じておくが良い。」 ノコ爺さんは目を細めてニコッと笑った。 ピーチ「はい。」 ピーチはハニカんだ。 実に愛くるしい表情だった。 ピーチ「本当にお世話になりました。貴方達も元気でね。」 キノコ達「は〜い。」 大きく手を降ってさよならをした。 暖炉に慣れた為か冬の風がやけに身に染みる。 そう言えばあの日もこんな風が吹いていた気がする。 そう言えば、そうだった。 613 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 21:05:13.54 ID:DsejQWOEO 相変わらずルイージは多忙であった。 ルイージ「計画案が通ったのはいいが…       借用書の取り立てや開拓に伴う家屋への補助金。       CMの撮影や、新作ゲームへの出演。…はぁ。」 ルイージはスケジュール標に目を通してはため息をついていた。 彼の疲れはピークに達していたのだ。 デイジーは副社長として事務所に居る為ルイージは一人だった。 ルイージ「もう少しだ。この山を乗り越えたら日の光が待っている。今が正念場だ。」 デスクのパソコンから総勢500名を超える社員に指示を出すのは楽ではない。 大規模会社の社長の宿命と割り切るに割り切れない程忙しいのだ。 615 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 21:15:16.84 ID:DsejQWOEO そんな時ふと大切な事を思い出した。 新しく作っているゲーム会社のオープニングセレモニーはいつにしよう。 12月半ばには建物はあらかた完成するだろう。 それに豪華なゲストや現代ゲーム業界の一任者達、 一般的客約3000名も招いた大きな式典だ。何かいい節目は無いものか…。 ルイージは開業セレモニーの開催日をあれこれ考えていた。 何はともあれ今は仕事だ。一段落ついてからでも遅くは無いだろう。 壁の掛けてある大きな額縁付きの自画像を眺めて、再びデスクに向かった。 621 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 21:25:37.78 ID:DsejQWOEO キノピオ「フェーンwwww俺様ヤイサホーwwww」 眠気を無くして朝まで狂っていたキノピオであった。 町をフラフラしているとどこからかギターの音が聞こえて来た。 キノコフスキー「君だけさ〜♪君だけのラブソングフォ〜ユ〜♪」 キノピオ「こいつが俗に言う売れないミュージシャンってやつかwww      笑いもんだなwww下手な歌詞だぜwww」 キノコフスキー「世間はお腹を空かして真っ暗〜♪          金や愛が欲しいと飢えているぅう♪愛も金も人それぞれ♪          十人十色でほいさっさっ〜♪」 キノピオ「ふんwなんだこいつwwww」 浮かれきっていたキノピオは夢でも見てる気分になっていた。 622 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 21:28:41.70 ID:DsejQWOEO キノコフスキーはキノピオの思った通り町の売れないミュージシャンであった。 何故売れないかと言うと、彼は上手い詞が書けないのだ。 歌やギターは一流だが作詞にはめっぽう弱い、 それでも諦めずにストリートミュージシャンを続けている。 彼は同時に詩人でもあるがやはり詩や文章は苦手なのでこちらも同様に売れていない。 金と時間だけが磨り減る毎日だったのだ。 しかし働く気は一切無く、詩と歌で生きて行こうとする夢追いの人だ。 633 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 21:50:04.63 ID:DsejQWOEO キノピオ「おいおっさんwww」 キノコフスキー「ヒョロロン♪歌は世界を包みました〜♪キノコバラードフォウユー♪」 キノピオ「聞けよオラ!!!」 バクシ! キノコフスキー「うあっ!」 ガシャンという音と同時にギターを叩き落とされた。 キノコ「ったく朝っぱらからうっせんだよヘボミュージシャン!!!!」 キノコフスキー「ななな、なんだってえ!僕は天才ミュージシャンだぁああ!」 キノピオ「黙れ!!」 バクシ! それほど恨みが有る訳では無いが、薬が切れかかり異常にムシャクシャしていた。 何度も殴って顔に唾を吐き、ギターを真っ二つにしてキノピオはその場を去った。 641 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 22:06:50.83 ID:DsejQWOEO 一時間程町を歩いた所でついに薬が切れた。 キノピオ「はぁ…はひゃひゃ…一日で薬使い切っちまった。」 副作用の脱力感がキノピオを襲う。 キノピオ「あーやる気でねぇ。動きたくねぇ。」 そうやって路地裏の壁に持たれていると何者かが肩を叩いた。 キノピオ「誰だお前?」 ?「貴方の味方ですよ…へへへ。」 見上げると紫の服に黒いツナギを着て髭を生やした長身の男が立っていた。 ?「君の欲しい物を上げよう、ついて来なさい。」 キノピオ「…あ…あひ。」 意識朦朧としながらもどこか魅かれる物を感じてその男についていった。 646 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 22:22:16.74 ID:DsejQWOEO 日も高くなった頃クッパ城で不穏な動きが有った。 クリボー1「おいおい最近クッパの奴部屋から出てこねぇなぁ。」 クリボー2「俺見ちまったんだけどよ…あいつピーチにフラれやがったんだぜ。」 クリボー1「ざまぁねぇwww人様を安い給料で働かせたバチだな。」 哀れなテーマパークの社長を小馬鹿にする社員達。 クリボー1「だいたいよお、いつまで同じネタでテーマパークしてんだよ。       だから女にも見限られるんだっつうの。」 クリボー2「馬鹿な上司を持つと困るねえ全くww」 648 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 22:24:13.24 ID:DsejQWOEO ノコノコ「おやおや二人とも楽しそうですね。どうかしましたか?」 クリボー1「いやぁよおwwマジ聞いてくれよwwクッパの野郎がよう…ごにょごにょ。」 ノコノコ「はははwwwそれは実に面白いwwwいや…まてよ。」 悪巧みには頭の切れるノコノコはある案を持ち掛けた。 ノコノコ「つまり今ピーチは一人と言う訳ですよね?」 クリボー1「ああ、そうだろうな。」 ノコノコ「これはチャンスですよ。」 クリボー2「どういう事だ?」 ノコノコが嫌な笑みを浮かべている。 652 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 22:35:26.99 ID:DsejQWOEO ノコノコ「あんな美しい女、他にいませんよ。」 クリボー1「確かにそうだな…」 クリボー2「だから何が言いたい…?ハッキリ言ってくれ。」 ノコノコ「彼女の体が欲しくないですか?      今彼女は飼い主の居ない身、何をしても許されるのですよ。くくく。」 クリボー2「ジュルリ…」 クッパ城社員達の目論みはエゲツなく悲惨で汚ならしいものだった。 ゲームのみならず現実においても悪である。むしろ逆転しているのではないか。 ノコノコ「明日の朝にはここを抜け出し、彼女を探しましょう。さぁ、荷仕度です。」 彼等は本物の悪魔の目をしていた。 657 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 22:44:59.46 ID:DsejQWOEO そして太陽と月がバトンを交換し、夜が来た。 マリオ「…フォウ!」 俺はまた夢で目が冷めた。 悪夢という名の牢獄からはいつになっても解放されはしなかった。 冷たく、誰も寄せ付けない、鉄格子に囲まれた俺だけの牢獄。 そこでもがいては罪に懺悔し、枯れた筈の涙を流していた。 マリオ「もうこんな時間か…。行って来るよ。」 ヨッシー「でってぃう。」 遅れ気味だった為いつもよ小走りで配管工屋へ向かった。 663 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/22(水) 22:55:50.38 ID:DsejQWOEO キノ五郎「うっす。」 マリオ「ういっす。」 キノ五郎「しっかし今日は寒いなぁ…。ガクブル。」 マリオ「パネェっす…。ガクガク。」 震えを押し殺して二人はマンホールに入っていった。 キノ五郎「よっしゃ、始めるぞ。」 マリオ「ういっす。」 今日も始まる単調な仕事。これが俺達の誇る生き様だ。 安っぽい仕事だと笑われようが関係ない、俺達は決して諦めない。 冬の寒さを押し返すような情熱が彼等の力だ。 717 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/23(木) 00:07:36.89 ID:1OymQGilO 夜の遅い頃ルイージはようやく仕事を終えデイジーと至福の時を過ごしていた。 ルイージ「お疲れ様。乾杯。」 デイジー「乾杯。」 ワイングラスの重なる音が静かに響く。 二人の顔がロウソクの火で静かに照らされていた。 今日は窓は締切ってある。閉鎖された空間での微かな灯はとても趣深い。 デイジー「今月はクリスマスね。今年もパーティーは開くの?」 ルイージ「パーティーを催す予定はまだ……いや…」 これだと思ったルイージは即座に閃いた。 720 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/23(木) 00:16:49.56 ID:1OymQGilO ルイージ「ああ、パーティーの予定なら今出来た。」 デイジー「え?」 ルイージ「俺のゲーム産業会社のオープニングセレモニーをその日にしよう。       記念すべき祝日に俺達の会社を世界へ向けて発信しようではないか。」 デイジー「貴方はやっぱしロマンチストね、貴方のそういうところ…」 ロウソクの光の元で二人の唇が重なる。 デイジー「好きよ。」 ルイージ「ああ、俺達が世界経済の頂点に立つ日は近い。今は精一杯頑張ろう。」 デイジー「ええ。」 愛、約束、夢、欲望、あらゆる感情が小さな火に揺られては鬩ぎ合い混ざり合っている。 ルイージは野心家でいて前向きだ、世界は本当に彼を選ぶのかもしれない。 730 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/23(木) 00:28:26.94 ID:1OymQGilO 仕事も終わろうとしたその時。 キノ五郎「おーいマリオ!外に来てみろ!」 マリオ「ういっす。」 キノ五郎「ほら見ろ雪だ雪!」 マリオ「ホントだ。」 静かに雪が降っていた。今冬初めての雪だ。 キノ五郎「今夜は冷えるぞお〜。」 いつもより寒いとは思っていたがまさか雪が降るとは思って無かった。 テレビは昔売ってしまった為天気なんて雲行き以外では全く解らない。 キノ五郎「少し積るかもしれねぇな。       すまねえがさすがに今日は家までは送ってやれねえ…。気をつけて帰れよ。」 マリオ「大丈夫っす。今日もありがとうございます。」 キノ五郎「また明日な。風邪引くなよ。」 と軽い挨拶を交わして悴んだ手に息を吹きかけながら家へ向かった。 731 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/23(木) 00:30:28.43 ID:1OymQGilO キノコフスキー「今日も夜空は真っ黒け〜♪お空がケラケラわらってら〜♪」 帰り道で妙な歌を聞き付けた。 近寄ってみると、折れたギターを膝の上に置いて歌を歌う痣だらけの男がいた。 キノコフスキー「助けてよ♪叫んだって一人だけ♪           今宵一人の雪見かな〜♪愛が無い無い♪お金も無い♪」 誠に妙な歌詞だが何故か聞き入ってしまった。 俺と同じ何かを感じた。同じ境遇だろうか、いや違う、歌でしか表せない何かだ。 そのへんてこな歌はまさしく歌そのものであった。 732 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/23(木) 00:37:24.72 ID:1OymQGilO キノコフスキー「キノコに幸有れ♪この世界にラブバラードフォーユー♪」 そして歌は静かに止んだ。 マリオ「ブラボー!」 拍手をしてそれから無意識にポケットをあさり10円を渡した。 たかが10円だったが彼は深々と礼をした。 やはり自分と似ている。 マリオ「頑張ってください。応援してます。」 賛美の気持ちを告げ再び家路についた。 大通りに出た頃に彼はまた歌いだしていた。 734 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/23(木) 00:43:31.19 ID:1OymQGilO ピーチ「雪まで降ってきちゃった。でももうすぐ彼の家がある筈だわ。」 近付くにつれて不安も大きくなっていた。 あの日みたいに乱暴されたらどうしよう、彼女の心は彼を恐れていた。 未だに取り払えないトラウマの様な感情が深い爪痕を残していたのだ。 雪が町の灯に照らされて美しい。 オレンジ色に輝く雪達はまるで空から降る花びらのようだった。 夢と間違える程に。 ピーチ「なんだか良い夜ね。」 雲で見えない星達はこの雪になって降り注いでいる。そんな気がしてならない。 737 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/23(木) 00:54:57.11 ID:1OymQGilO ピーチ「この家だわ!」 何もかもが懐かしい。古びたポストにはうっすらとMARIOと書いてある。 仕事の後はよくこの家に皆で来ていた。 とても一流スターの家とは思えない程狭いのだが皆といれば楽しかった。 ピーチ「中が暗いわね…誰もいないのかしら。」 やっぱしもうこの家には…そう思って振り返った時だった。 マリオ「まさか君は…」 ピーチ「…マリオ!」 過去に縛られた運命の鎖が音を立てて砕け始めようとしてた。 まるでそこだけが世界からくり抜かれて時間が止まっているようであった。 浮き彫りの世界でオレンジ色の雪だけが無数の星のように降り注いでいた。 ゲームのエンディングにも似た感動。 いつか味わった止めどない幸福感。 色褪せない全てがこの瞬間に甦る。