20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:24:57.50 ID:US79mtF0O 何秒、何分だろうか、二人は目を合わせたまま動けずにいた。 深夜の町に車の音は無く町は静まり返っている。 あると言えば雪の音と二人の白い息の音だけだ。 二人の頭に微かな雪が降り積もった頃になってようやくピーチが口を開いた。 ピーチ「…こんばんは。」 マリオは喋り出す事が出来ずにいた。 口が開きそうになっては閉じるを繰り返した。 今にも押し潰されそうな程の記憶がマリオにのしかかる。 追憶の狭間に揺らぐ意識。 彼女は本物のピーチなのかと疑う程に予想もしてない事態であった。 同時にいつか諦めた未来の形でもあった。 どんなに思考を巡らせて意識の海を泳いだとしても、 今この瞬間は形而下であり紛れも無い現実なのだ。 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:29:56.02 ID:US79mtF0O マリオ「何でここに…。」 それがマリオの第一声だった。 不安と驚きに満ちた声はかつての彼とは全くもって違う物だった。 ピーチ「貴方に会いに来たの。」 あの日彼女は出て行って、それっきりの関係だった筈。 それが今になって会いたいとは一体。 ピーチ「正直言ってあたしも良く解らないの。全部無くしちゃって。     ただ、ここに来れば何かがある気がしたの。」 良い物など何もありはしない、有ると言えば限り無い絶望だけだ。 マリオ「悪いがここには何もない。」 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:36:45.91 ID:US79mtF0O ピーチ「ここには貴方がいるじゃない。」 マリオ「なんでそんな…。今更…。」 なんともぎこちない言葉だ。 風の音が微かに聞こえる。二人の間に吹き抜ける冬の風。 ピーチ「昔の事はいいから。」 マリオ「いや…俺が悪い。もう君に会う事は出来ないし会う資格も無いと覚悟していた。」 ピーチ「変わったわね。昔の貴方はもっと自信に充ち満ちていていたわ。」 その自信が俺を有頂天にしたのだ。その自信が君を傷つけたのだ。 マリオ「頼む。察してくれ。」 マリオは下を向いた。 足元には僅かに雪が積っている。 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:42:40.98 ID:US79mtF0O バチン! 滅多に暴力を振るわないピーチが力一杯マリオをひっぱたいた。 寒さ故にマリオの頬が赤く染まった。 ピーチ「ほら、あの時の借りは今ので返したわ。     もういいのよ。男ならレディーを引っ張りなさい。」 マリオ「…俺にはもうその資格は無い。」 話が停滞している。時々動いては振出に戻っている。甚だ重苦しく鈍いリフレイン。 ピーチ「もう、ウジウジしないの。」 マリオ「そんなんじゃないさ。君と疎遠になったのは当然の仕打ちだと思っている。」 ピーチ「だからさっきのでチャラよ。それにレディーを外に置いて行く気?それこそ罪よ。」 何かにつけて疎い俺はピーチが寒そうにしているのに今更気付いた。 とりあえず家の中で話そうと思いドアを開けた。 ピーチの横をすれ違う時に懐かしい匂いがしたのを感じて、 彼女は今も彼女のままなのだと、微かな安心を感じた。 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:51:06.48 ID:US79mtF0O 家に入る時、ドアノブがいつもより重く感じた。 まるで知らない新しい扉を開くような感覚であった。 マリオ「ただいま。」 ヨッシー「でってぃう!ってまじかよ!」 あのマリオが女を連れている。 ヨッシーはついつい言葉が飛び出てしまうくらい驚いていた。 ヨッシー「でってぃう!でってぃう!」 ヨッシーは強がりだ。不覚にも驚愕してしまったことを何とか紛らわした。 ピーチ「きゃあああ////ヨッシーちゃんじゃない///こんなに大きくなって。」 マリオと初めてゲームで共演した頃赤ちゃんだったヨッシーが今はすっかり大人だ。 トサカも立派である。 ヨッシーは全く彼女を覚えていないのだが、ピーチは喜びのあまり飛び付いた。 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:51:57.29 ID:LNKMciFe0 ヨッシーwwww 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:52:33.04 ID:nDz7w9uV0 でっていうしゃべんなwww 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:52:44.13 ID:RpVv01DAO でってぃうwww 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:53:37.53 ID:RNAuga2tO ヨッシー糞ワロタwww 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:54:20.17 ID:sWPbbUV60 ってまじかよ! ワロタwww 44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:56:12.17 ID:US79mtF0O ヨッシー「でれでれでってぃう////」 ピーチ「大きくなったわねぇ///よしよし///」 ヨッシー「ウ〜ンヨッシー!///」 俺は戯れるピーチを横目で見ていた。 笑顔の彼女は本当に愛らしい。しかし俺にあの笑顔は勿体ない。不釣合いだ。 マリオ「ピーチ。そろそろこっちへ来てくれないか。」 ピーチ「分かったわ。」 マリオは無意識にピーチと呼んだが。ピーチにはそれが嬉しかった。 どんな形であっても、自分の名が呼ばれるのは誰かに必要とさている証だからだ。 2人は小さな机を挟んで座った。 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:56:51.53 ID:nDz7w9uV0 でれでてでってぃう// うぜえwwwww 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:57:56.13 ID:sWPbbUV60 でっていう喜びすぎwwwwwwwww 48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 18:58:48.24 ID:pEo1KCT80 >どんな形であっても、自分の名が呼ばれるのは誰かに必要とさている証 この作品からは度々大切なものを感じる。ためになります。 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 19:00:50.50 ID:YDQb4FYN0 ヨッシー「ウ〜ンヨッシー!///」 そういえばこんな鳴き声もあったなwwwwwでっていうしか思い浮かばんかったわwwww 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 19:07:27.12 ID:sWPbbUV60 >>49 ヨッシーストーリーのなw 俺の中では、ふんばりジャンプするヨッシー→よっしぃ              しないヨッシー→でっていう 50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 19:04:09.09 ID:US79mtF0O マリオ「これからどうするつもりなんだ。     悪いが君が俺をいかに受け入れようが今の俺には何も無い。     見ての通り家はこの様だ。クッパはどうしたんだ。」 ピーチ「さよならしたわ。」 マリオ「!?」 ピーチ「あの頃は彼の本性を知らなかった。彼は汚ならしい悪魔よ。ただの怪物よ。」 混乱しそうだった。 過去は嘘なのか、夢なのか、いや確かに過去は存在する、それ故の今じゃないか。 あんなに愛し合っていても人はいつかは別れる物なのか。 マリオは常世の虚しさをひしひしと感じた。 52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 19:07:36.18 ID:US79mtF0O マリオ「しかしあの日俺は君に…」 ピーチ「その話はもうやめて。…あれ?あの写真…。」 ピーチは壁に掛けてある写真を眺めた。 マリオ「ああ、君がまだ新人だった頃に皆で撮ったやつだ。」 ピーチ「あの写真ならあたしも。」 ピーチはバックをあさった。 ピーチ「ほら。」 驚いた。てっきり捨てていたとばかり思っていた。 ピーチ「あたしが辛かった時や泣きたかった時に何度もこの写真に励まされたわ。     楽しかったあの毎日を頼りに頑張れると思ったの。」 マリオ「…ありがとう。」 俺は何を言っているんだ。なぜここで礼を言うんだ。 一つだけ分かるのは今のありがとうは至極自発的な言葉だったということだ。 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 19:12:18.34 ID:US79mtF0O マリオ「ありがとう…。ありがとう…。ありがとう…。」 言葉が自然と口から溢れてくる。 ありがとう一回毎に牢獄の鎖が解けていく。鉄格子が砕けていく。 ああ、溢れようとしているのだ。甦ろうとしているのだ。満ち足りようとしているのだ。 マリオ「ありがとう。」 ようやく止まった頃になると俺は泣いていた。枯れた筈の水源から溢れたオアシス。 そして俺のカラカラの素肌に意識に心に優しい雨が降り注ぐ。 砂漠に降る雨。 希望の雨。 命の雨。 地から空から溢れている、潤っていくのだ。 俺は包みとるようにまた抱き締めるように瞬きをし、涙を外界へ解き放った。 やがて潤み歪んだ視界が原型へと戻っていく。 はっきりとしていくに連れて目の前の彼女の輪郭はより鮮明になっていく。 輝きを増していく。 55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 19:16:54.90 ID:US79mtF0O ピーチはマリオの頭を撫でた。 いつか離れた母のように優しい手触りで。 それは慰めでも、情でもなく、愛おしむ気持ちであったのだ。 長い人生の一カケラに過ぎない時間なのだが。 最も輝くカケラの一つになることは本能的に分かった。 過去の終りと未来の始まりを告げているその世界は 二人にとって一瞬であり永遠であった。 窓の外に少しだけ積った雪が柔らかい光を放っている。 オレンジ色の暖かい冬の光、切なくも幸せな夢の色。 ありがとう。俺は幸せだ。 61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 19:23:54.08 ID:US79mtF0O ピーチ「泣かないの。ほら、男の人でしょ。」 マリオ「すまない。ありがとう。」 格好悪いと思われたに違いないがそれでも良かった。 クッパ城を出た彼女には家が無い、俺が彼女の家になろう。そう決意した。 マリオ「ええと…うん…あれだ…。俺と一緒に暮らさないか。」 不安と期待のこもった一世一大の台詞だ。 ピーチ「ええ。喜んで。」 と彼女はハニカンで笑った。 俺はまた泣いた。その度に彼女は俺を撫でた。 マリオはすっかり反省してるみたい、 あの日のようには絶対にならないって断言できるわ。 あたしにも家族ができました、ノコ爺さんありがとうございます。 あたしは幸せです。 65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 19:29:28.66 ID:US79mtF0O そして二人は寝床についた。 作業用の小さな布団を敷いて、寄り添うように眠った。 歳を重ねた二人の表情はなんとも和やかで、朗らかな様子であった。 マリオ「グー、グー。」 ピーチ「…マリオ…マリオ…。」 夜が明ける頃に二人は眠りについた。 俺達二人なら大丈夫さ、これから先何があっても乗り越えられる。 未来を決め付けるのは良くない事だが、今はそう思うだけで幸せだったのだ。 少し頭を出した太陽の光が二人を優しく照らしている。 ようやく雪も溶け始めようとしているそんな頃だった。 66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 19:32:55.06 ID:pEo1KCT80 雪はいつもマリオたちの心境とか状況を比喩してるみたいだな…。深い。 それはおいといてピーチに萌えるんだが。 71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 19:38:08.04 ID:nKo+CHd+0 作業用の小さな布団を敷いて、寄り添うように眠った。 作業用ねww作業w 72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 19:40:35.12 ID:LNKMciFe0 >>71 おっ なるほどねwww 80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 19:50:26.37 ID:ckq8PBxQ0 >>71 何の作業だwwwww 76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 19:46:45.95 ID:US79mtF0O しかし一方で暗い昼が始まろうとしていた。 キノピオ「やったぜ…あいつは神様だ…こんなに薬をくれるなんて。しかも無料でよお。」 キノピオ「ワルイージか…へへ。頼りにしてるぜ旦那。」 ワルイージは裏社会のリーダーであり、主に違法薬物の販売をしていた。 その商法は悲惨極まりなく、町でドラッグにハマるキノコを捕まえては薬漬けにして、 薬の染み込んだ頃に暗殺し、そのキノコを高額で売りさばいているのだ。 キノピオは自分がそのターゲットであることをまだ知らない。 キノピオ「あひゃwwwあひゃwww」 狂気がキノピオの体を蝕み、意識までをも支配しようとしていた。 82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 19:57:32.42 ID:US79mtF0O そしてクッパ城では。 クッパ「ギャオオオス!誰も居なくなっているではないかああ!」 クリボーやノコノコ達が居なくなっていた。 クッパ「ギャオス…ついに皆に見捨てられてしまったのだ…。俺様は…。」 クッパはこう見えて意外と淋しがり屋なのだ。 城の壁にある若き日の自画像を眺めているうちにすっかり夜になってしまった。 85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 20:04:11.91 ID:US79mtF0O マリオ「いってきま〜す♪」 ピーチ「行ってらっしゃい♪」 ヨッシー「でってぃう。」 今日のマリオは見違える程元気な声だった。 あの仕事辞めてから配管工で働いてたんだ。 毎晩毎晩大変だわね、そうだわ…今日はおご馳走作って待ってましょ。 お金は残り少ないけどきっと大丈夫だわ。 91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 20:14:29.30 ID:US79mtF0O マリオはいつものようにキノ五郎と仕事をしていた。 キノ五郎「ゲッホ!グェッホ!」 マリオ「キノ五郎さん、大丈夫ですか?」 キノ五郎「すまねぇな。       昨日あんな事言っといておきながら自分が風邪ひいちまった。       ゲッホ。」 マリオ「咳する度にキノコ菌が飛んでますよ。今日は休んだ方がいいんじゃ…。」 キノコ五郎「馬鹿ぬかすんじゃねぇ!ゲッホ!        俺は今まで皆勤賞なんだよ、ここで諦めてたまるかってんだ。        上手くいけば係長に昇格できるかもしれねぇ…グェッホ!」 マリオ「じゃあせめて怪我をしないようにしてくださいよ。」 マリオは少し心配だった。 99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 20:29:08.73 ID:US79mtF0O マリオは今日あった事を話ながら仕事をしていた。 キノ五郎「そおかぁ。ゲホッ。良い嫁出来て良かったなマリオ!」 マリオ「いやいや嫁だなんて滅相もない、結婚なんてしてませんよ。」 キノ五郎「ははは、わりぃわりぃ。オッホン!       でも今がチャンスだぜ早いとこ結婚しちまって良い家庭を築いたらどうだ。」 マリオ「今の俺にはまだそんな金も自信もありませんよ。」 キノ五郎「大丈夫さ。大切なのは愛だよ愛。」 マリオ「そうっすね。俺も頑張ってみます。」 ついにあいつにも女が出来たか。はは、ちょっと寂しいな。 今までは俺だけの男だったのによ、って俺は何を考えてるんだ。 とにかくマリオ…その幸せ絶対無くすんじゃねぇぞ。俺が一番応援してるからな。 106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 20:35:02.43 ID:US79mtF0O 仕事は六時間以上続き、ようやく終わろうとしていた。そんな時事件は起こった。 キノ五郎「よし、そろそろ上がるか…ゲッホ!ゲッホ!」 マリオ「今日はお疲れ様でs…!」 梯子を昇って行く途中キノ五郎は咳をした反動で手を滑らせた。 キノ五郎「っうぁああああああ!!」 マリオ「キノ五郎さん!!!!」 ドスッと重い音が冷たい配管工に響いた。 112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 20:39:10.69 ID:US79mtF0O マリオ「キノ五郎さん!」 キノ五郎「…」 返事がない。俺はキノ五郎さんをおぶってマンホールから出た。 そしてタイムレコーダーを押すのも忘れて彼を病院へ運んだ。 幸いにも町で一番大きな病院が彼を受け入れてくれた。 少し不安だったのだ。 三年前のキノ五郎さんみたいになったらどうしようと何度も思った。 そして彼はすぐさま緊急治療室へ運ばれた。 赤いランプが点滅している。 ヤケに無機質な白い部屋はなんだか怖く感じたが キノ五郎さんへの心配の方が大きかった。 頼む死なないでくれ。 120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 20:55:32.77 ID:US79mtF0O 赤いランプが消えて中から医者が出て来た。 マリオ「キノ五郎さんは…!」 医者「命に別条はありません。    ただ、右足を骨折しておりひどいウィルス性の風邪もひいておりますので    しばらくの間は当院に入院していただくことになります。」 マリオ「そんな…。」 マリオは悔しかった。 あと少し頑張ればキノ五郎さんは昇格出来ていたかもしれない。 あの職を誇りとするキノ五郎さんにとってあまりに残酷な事件であった。 あの時手を出していればとか、俺が受け止めれればとか どうしようもない事ばかり考えては頭を抱えた。 結局その時にキノ五郎さんを見ることはなく。 明日お見舞いに行くことを決めて家に帰った。 マリオ「それじゃあ意識が戻ったら、明日お見舞いに行くって伝えといてください。」 医者「かしこまりました。」 そうして病院を後にした。 122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 20:57:13.61 ID:US79mtF0O マリオ「あぁ…明日は花でも持って行くかな。」 命に関わらなかったと聞いてマリオは仮初の安心感をいだいていた。 明日は朝からお見舞いに行こう。 そう思いながら町の隅を歩きつつ家へ向かった。 129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:08:20.97 ID:US79mtF0O マリオ「ただいま…。」 ヨッシー「でってぃう。」 ピーチ「おかえり♪あら…元気ないわね。」 ピーチには元気がない事がすぐばれた。 マリオ「ああ…大切な上司が怪我と病気で入院してしまってな。」 ピーチ「そう…それは散々だったわね…。」 ピーチ「ちょうど良かったわ。ほら、これ見て。」 机の上には何年も触れられなかったくらいのご馳走が並べられていた。 マリオ「一体これは…?」 ピーチ「ふふん♪貴方の為に作った手料理よ、ゆっくり召し上がれ♪」 マリオ「あ、ありがとう!ヤッフゥウウ!」 こんな料理は本当に久し振りだ。マリオは飛び付くように食べている。 ピーチ(ふふ、可愛い♪) それを見ながらピーチはクスッと笑った。 そしてピーチも隣りに座って料理を食べた。 微笑ましい光景だ。 130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:09:05.41 ID:sWPbbUV60 ヤッフゥウウ!ってキノ五郎さん不憫wwwwwwwwww 131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:09:44.92 ID:Uh3SDsStO マリオのテンションw 132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:11:07.00 ID:US79mtF0O 食事も終り、マリオは散らかった食器片付けをしていた。 マリオ「片付けは俺がするよ。」 ピーチ「あら優しいのね。」 マリオ「あんな美味しい料理初めて食べたよ。これはその御礼さ。」 ピーチ「またまたお世辞を…///」 マリオ「顔があかいぞ〜♪」 ピーチ「も〜///マリオの馬鹿///」 そんな他愛も無い時間が俺達にとっては大切で尊いのだ。 133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:12:16.39 ID:ZVRCntCgO キノ五郎さんが不憫すぎるぞwwwww 134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:13:15.27 ID:sWPbbUV60 忘れんなよwwwwwwwww 135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:14:02.97 ID:zySoAStD0 これはにやけてしまうwww 137 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:16:46.63 ID:cV7eGMTGO ニヤニヤ 138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:17:43.67 ID:LNKMciFe0 ニヤニヤが止まらないwwwww 136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:14:38.88 ID:US79mtF0O 片付けが終わった後俺達は家の外へ出かけた。 何をしに出かけたかと言うと、キノ五郎さんへの花を摘みに行こうとしていたのだ。 ピーチが冬でも綺麗な花が咲く良い場所を知っていると言うので俺は彼女に付いていった。 暫くつまらない話をしながら歩いて行くと郊外の泉に着いた。 冬なのに泉の水面に花が咲いてプカプカと浮かんでいる美しくも神秘的な場所だった。 泉の周りには小さな川が出来ていて周りには花が咲き乱れている。 そんな空間で月に照らされたピーチはいつにも増して美しかった。 141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:22:12.73 ID:US79mtF0O ピーチ「この花なんてどうかしら?」 今まで花にはあまり興味が無かったが、今日は見違えて美しく思える。 月に向かって咲く花を見ては、あの花も届くはずの無い空を 目指しているのだろうかと一人で思いにふけったものだ。 マリオ「これもどうだい?」 そんな風にしていくつかの花が集められ、 やがて多才な色を放つ華やかな花束が出来上がった。 ピーチ「上出来よ。キット貴方の上司さんも喜ぶ筈よ。」 マリオ「ああ。ありがとう。」 そして二人は家に帰った、夜の町を花束を担いで足並みを揃えて歩く二人は まるで新婚の夫婦であるかのようだ。 家に着いた後ピーチはもう少し起きていたいと言ったが マリオは疲労困憊していたため先におやすみを交わして眠った。 151 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:35:18.01 ID:US79mtF0O しかし一度は寝たものの、隣りに寂しさを感じ起きてしまった。 マリオ「ピーチ…まだ起きてたのか…。」 彼女はノートに何かを書いているようだった。 そして隣りには何か編み物のような物が置いてある。 マリオ「何をしてたんだ?」 ピーチ「ひ・み・つ♪」 マリオ「見せてくれよ。」 ピーチ「だから秘密だってば。女の子の秘密を覗かないの。」 マリオ「ぐうう、マンマミーア…。」 そのくらいは許してやろうと思えたのはやはり歳をとったからだろうか。 俺は再び寝床についた。 暫くするとピーチも入って来た。 この日も二人は寄り添ってまたおやすみの挨拶をしてから眠りについた。 気がついたら今度は先にピーチが眠っていた。 ピーチの体温が服越しに伝わったくる、生きている確かな証だ。 月明りしか無い薄暗い部屋に残ったのは、 彼女の可愛らしい鼻息と自分の心臓の音だけだ。 薄れつつある意識の中でさえも彼女を想っている。 明晰夢でも見ているみたいだ等と考えているうちにマリオも眠ってしまった。 156 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:45:31.59 ID:US79mtF0O 窓から柔らかい日の光が差し込んでいる。 ピーチ「ふわわ…おはよお。」 マリオ「フォウフ…おはよ。」 二人とも深夜に寝ている為か朝はすっかり寝ぼけていた。ヨッシーはまだ寝ている。 窓を開けたり服を着替えたりとゆっくり朝の仕度を済ませてからマリオはドアを開けた。 マリオ「んじゃ行って来るよ。」 ピーチ「いってらっひゃい。」 慣れない夜の生活故ピーチはまだ眠たいみたいだ。 半分無意識の中で俺を見送った。 俺はキノ五郎さんに会うため花束を持って医者へ向かった。 159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:50:54.30 ID:US79mtF0O 医者の受付で部屋を聞いてから彼のいる部屋へ向かった。 キノ五郎「…おお…マリオか…」 キノ五郎さんはすっかり弱ってベッドで横になっていた。 マリオ「おはようございます。花束持って来たんで置いときますね。」 キノ五郎「すまねぇな…」 マリオ「いえいえ、体の事は医者に聞きました。     元気になったらまた一緒に仕事しましょう。     それまでは俺が二人分頑張ります。」 キノ五郎「頼もしいねえ…期待してるぞ。」 マリオ「ありがとうございます。」 160 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 21:53:55.65 ID:US79mtF0O キノ五郎「んでよ…どうなんだ。」 マリオ「フォウ?」 キノ五郎「相変わらず察しが悪いなぁ。女だよ女…」 マリオ「あぁ、上手くやってますよ。昨日もご馳走作ってくれましたし。     この花束も彼女と作りました。」 キノ五郎「それはそれは本当に良かったな。幸せになれよ。」 マリオ「もちろんすよ。」 キノ五郎「大切な物が増えたな。だが忘れるな…       人生にはほんの数回だけ大切な物を選ばなくちゃいけねえ時がある。       何かを得る為には何かを捨てなくちゃならない。       二兎を追う者一兎をも得ずって奴だ。」 キノ五郎「そんな時人は2種類に別れる。       何かを捨てられる人間と捨てられない人間。       迷いの無い前者は幸せ者だが、ある意味寂しい選択なのかもしれない。       なんにせよ大切なのは勇気だな。つまり男気だ。」 キノ五郎さんの顔は真剣だった。 かつて守れなかった大切な物を思い返しているようにも見えた。 165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 22:09:02.69 ID:US79mtF0O キノ五郎「あとよ…お前に一つ頼みたい事があるんだ。」 キノ五郎「近い内に俺達の配管工にも取り立て屋がくるはずだ…。       その時はちゃんと事務所を守ってくれよ。」 マリオ「もちろんすよ。どんな輩が来ても追い返してみせます。」 キノ五郎「そうだその意気だ。」 マリオ「ういっす。」 キノ五郎「いいかマリオ…。キノコの神様は最後まで諦めなかった者に…」 マリオ「幸せを与える。でしょ。」 二人の声が重なった。 キノ五郎「ああ、その通りだ。俺達の誇りを守るんだ。」 マリオ「約束しますよ。」 今まで何度も約束した事だが確認するようにまた約束した。 そして俺は病院を出た。 166 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/25(土) 22:12:52.01 ID:US79mtF0O キノ五郎はポケットからあの古錆びた指輪を取り出し 横になったまま太陽の光に晒していた。 キノ五郎「なぁ…俺にもあんな後輩が出来たんだぜ。       それに比べ俺はたった一人さえ守れないつまんねえ男ですまなかったな。       お前のお陰で頑張ってこれたんだ。」 キノ五郎「もう冬だけどよ、仕事場は相変わらずの夏真っ盛りだ。       はは、お前が生きてたら会わしてやりてえなぁ…。       一緒に飯でも食いに行こうぜ、そしたらお前は笑うかい。」 キノ五郎「俺も復帰したらまだまだ頑張るからよ。       そしたら空の上でも安心できるだろ。応援頼むぜ、愛してる。」 指輪にキスをしてまたポケットにしまった。 一つ一つを思い出しては胸一杯になるまでしまって キノ五郎はにこやかな表情で眠りについた。 彼は何年時が過ぎてもひたむきに一途であった。