418 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 21:24:29.98 ID:vbw6cNSZO マリオ「行っちゃダメだ…!」 君が居なくなったら俺は…この期に及んでなお自分の事を気にかけてしまった。 しかし体が動かない。 絶対的な距離、近くて遠い、惨たらしい距離、 今日まで極めて近付いていた二人の距離が今形になって開いていく。 夢なら覚めてくれ。彼女との距離は開くばかり、既に彼女は腰まで水に浸かっている。 彼女が、思い出が、幸せが、水に溶けていく。 少し空が曇って来たと思ったとたん雨が降って来た。 ピーチの雨に濡れてクシャクシャになった髪や服にはかつての面影は無い。 マリオ「ピーチ!」 何度も何度も名前を呼んだが、 雨の音にかき消されているかのように彼女は振り向かない。 何万回の誓い、思いが冷たい雨の雫にに打ち抜かれて崩れていく。 幼い頃公園の砂を固めて作った城が翌日には崩れ去ってしまってた光景が思い出された。 421 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 21:31:14.49 ID:vbw6cNSZO 空よ、そんなに泣かないでくれ。俺達を哀れみないでくれ。 体が動かないなら言葉しかない。言葉を直接心にぶつけるしかない。 俺に残された言葉、彼女に言いそびれたたった一つの言葉を。 マリオ「ピーチ、俺はお前を愛してる…!」 ピーチはマリオの方を振り向いた。 しかし彼女は今までみたことないくらい辛い顔をしていた。 ―ごめんね― ピーチは下唇をかみ締めてマリオの目を見た。 彼女は泣いている。雨の中でもハッキリ分かる程確かに泣いている。 あんなにも笑顔をくれた彼女が…あんなにも泣いている。 彼女を救いたい救えない。彼女を連れ出したい連れ出せない。 マリオは膝をついた。あの時と同じだ。 目の前の光景に打ちひしがれて見てる事しかできない。 ああ、声が聞きたい、笑っておくれよ…俺には君が必要なんだ。 非情にも雨の織り成す狂詩曲は終奏へと加速して行く。 423 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 21:34:39.92 ID:FdZPCTMM0 下唇をかみ締めてマリオの目を見た >>1よお前は何度おれを泣かせるんだ… そういう時たいてい男は動けないんだよな、なんかすごく分かるんだが。 426 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 21:41:00.53 ID:vbw6cNSZO ピーチはやがて泉に沈んだ、俺は本当に長い間動けなかった。 暫くしてピーチの抜け殻が浮かんで来た。魂を失った冷たい骸。 やがて空は晴れて太陽が泉を照らす。彼女の白い素肌はキラキラ輝いてた。 泉の花々は静かに流れ、彼女だけ時間が止まっているように泉に浮かんでいた。 先程より少し暖かく湿ったい風が嫌に感じるくらいに吹いている。 風に揺られる花は綺麗でいて神秘的で、 滴る雫の奏でるピチカートが四方八方から聞こえて来る。 雨上がりの曇の間から出る光が俺とピーチを照らしていた。 428 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 21:42:37.48 ID:DiNQtgjSO (´;ω;`) 429 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 21:42:40.20 ID:rNpSkIeFO いやあああああああ 432 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 21:43:06.52 ID:oVbE1tb80 ああああああああああああああああああああ 433 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 21:43:28.77 ID:bWCBNJeN0 ( ゚д゚ ) 438 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 21:49:32.15 ID:vbw6cNSZO 花を見たんだ。 雫がゆっくり葉っぱを下って来たと思ったら、すぐに地面に落ちて弾けて消えた。 弾ける瞬間雫はシャボン玉みたいに周りの光景を写し取っては砕けて消えた。 花は生きる為に水を必要とする。 葉っぱの上の雫は一見綺麗だが、それはあくまで人間中心の視野でしかない。 花にとっては落とさなくてはならないもので、決して包むべき対象では無いのだ。 あの時花も闘っていたに違いない。 折れるまい、諦めまいと、垂直に降る雨を押し返して耐えたのだ。 またいつか襲い来るであろう雨風に恐怖する事もなく、 運命を真向から受け止めて、体を張って闘っていたのだ。 見てみろ、彼等はいつだって空を向いて咲いているではないか。 人もいない時代からずっとずっとそうやって生き抜いてきたのだ。 彼等は実に強く、誇り高く、気高い立派な生き物だ。 泉の花達は彼女を見て何を思ったのだろうか。 花に答えを求めた所で俺に分かる筈は無い。到底敵う筈もない。 447 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 21:58:23.79 ID:vbw6cNSZO ゲームオーバーというよりは神話でも読んでいるようだった。 マリオ「…」 ピーチを遠い目で見ては彼女の眩しさを思い出した。 決して太陽に比喩された物では無く、あくまで彼女の内から染み出してくる 限り無い思い出と愛情が彼女を眩しくしているのだ。 瞬きの出来ない眩しさで、夕方までそれを眺めていた。 俺は未だに現実を受け止められずにいた。 夜が来てもそこにいたが、寒さも増してきてヨッシーが心配だった。 どんな消失もいつかは切り捨てなくてはならない。でなければ彼女に悪い。 俺はピーチを泉に残して家に帰った。 途中何度も後ろを振り返ったが、その度に苦しくなった、なんだか吐き気がする。 もうここへ来ることは無いだろう。 448 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 22:01:21.61 ID:vbw6cNSZO ヨッシー「でってぃう。」 ヨッシー、お前はいつも元気だなぁ。 幸せって、不幸があるから幸せに感じれる物だと聞いた事がある。 ヨッシーは生まれてこのかたずっと俺と暮らしていたから不幸に慣れたのか。 こいつはある意味不幸で、ある意味幸せなのかもしれない。 マリオ「よしよし…」 ヨッシーが不思議そうな目でこっちを見ている。 ピーチを探しているのか、彼女なら遠くへ旅にでたよ。 ヨッシーがもっと大きくなったら会いに来てくれるってさ。 はは、心配するなよ、俺はお前と一緒だ。 454 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 22:10:16.93 ID:vbw6cNSZO その夜俺はピーチの日記を見つけた。ああ、あの時これを書いていたのか。 重たい紙切れの歴史を一枚一枚振り返った。 ―今日からマリオと暮らす事になった。   正直あの日の恐怖や違和感はまだ取り払えていない。   怖いけど今は彼を信じるしかないと思う。― やはり俺が怖かったのか…。すまない。 ―今日は彼の上司が入院したみたいでなんだか辛そうだった。   そうだ、マフラーを編みましょう。   クリスマスにこっそりプレゼントしたらどんな顔するかしら楽しみだわ。   きっと喜ぶに違いないわ。― あの編み物はそういう事だったのか。 ふと気がつくとマリオは作りかけのマフラーを握り締めていた。 455 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 22:12:19.16 ID:vbw6cNSZO ―彼との生活はなんだかんだで毎日楽しい。あたしは幸せだわ。― ああ、俺もだった。 ―今日は彼が泣いた。上司の死と職場の死、あたしのせいだ。   あたしのわがままな願いの為に彼はこんな目に。あたしはどうすれば。― 君は悪くない。俺を責めてくれ。頼む。 布団には微かにピーチの匂いが残っている。甘く懐かしい記憶がそこにはあった。 俺は疲れた。もう寝よう。 459 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 22:15:06.01 ID:vbw6cNSZO ルイージ「そろそろ大仕事も最終段階だ。商業で国が閉鎖的になりつつある時代。       ここで負ける訳にはいかない。必ず各国を押し返してやる。」 デイジー「ええ、私達の作業は順調よ。」 ルイージ「あと少しの辛抱だ、今日はゆっくり休むか。」 ルイージは上着を捨ててデイジーに抱き付いた。 デイジー「貴方ったら乱暴なんだから///」 今夜も町の灯を上から眺めながら二人はまどろみ、愛に飲まれていくのだ。 間も無く完成する未来を夢見て止まない二人である。 462 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 22:19:06.52 ID:vbw6cNSZO 翌日マリオは口を開いたまま下を向いていた。 マリオ「そうだ…日記書こう。」 ―今日は腹が減ったから床のホコリを食った。美味かった。― うん、上出来だ。 俺って文才あるんじゃないか。うんあるある。パネェよ。 これから数日日記を書いては下を向いたまま動かない日が続いた。 464 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 22:21:33.77 ID:vbw6cNSZO ―今日はヨッシーが「あだたりんだぶー!あだたりんだぶー!」と五月蠅い。   さては腹が減っているんだなと思ったから床のホコリを食べさせてあげた。   おとなしくなった。― なんつうかホコリってあたりが質素な感じでいいよな。はは、はははは。 ―今日は腹が痛かった。俺は寝る。― うん、シンプルさが生み出す奇跡だ。俺すげえ。 マリオの正気は殆ど無くなっていた。 475 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 22:32:05.39 ID:vbw6cNSZO ある朝カレンダーを見てみた。いつからだったっけ。カレンダーを見なくなったの。 そんな事はどうでも良かったが今日は12月23日だった。 もうすぐクリスマスイブだ、それに雪が積ってる、俺は外へ向かった。 マリオ「イイイヤッフウ!!!雪だ雪!!!!」 マリオ「テンション上がるぜわっしょいわっしょい!!!」 子供みたいにはしゃいでは町を駆け回った。 町を歩く人目なんて知らないフリをした。それはなんと楽しかった事か。 マリオ「イヤッフゥ!!!マンマミーアアア!!!」 パタパタ帽子でも被った時のように俺は有頂天になっていた。 全部無くすと意外と清々しいものだ。 478 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 22:39:29.80 ID:vbw6cNSZO ドスッ!俺は何かにぶつかった。 キノピオ「いって!!!マリオかてめぇ!まだ生きてんのかよ屑野郎!」 マリオ「す…すまない…。」 マリオ「お前…その体?」 キノピオはかつては白いキノコだった筈が すっかり黒くなっているしなんだか痩せこけている。 キノコ「ジロジロみんなよおっさん!!!」 マリオ「オ"ォウ!」 マリオ「ウググ…まさか…薬物を使ったのか…」 キノピオ「うっせえっつってんだろが!!!」 バクシ! マリオ「フォオ"ウ!」 ダメだキノピオよ。それは間違っているぞ。 その時雪に埋もれていたマリオの中の正義に火が付いた。 482 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 22:47:44.00 ID:vbw6cNSZO マリオ「やめるんだ!」 バクシ! キノピオ「っつ!」 キノピオ「殴りやがったな粕!」 マリオは胸倉を掴まれた。 マリオ「やめるんだ…薬物は悪魔の薬…お前の体を蝕むぞ!」 キノピオ「全部てめぇのせいだろが!!!!」 キノピオ「俺があの事件のあとどんだけ苦労したかわかってんのか!!!」 マリオ「!?」 キノピオ「あの時のゲームで俺は副主役だった!      初の主役級だなのにあのゲームは打ち切りになった!!!      俺はあんたと交流する機会が増えたからあんたの仲間だと思われたんだよ!!!」 バクシ! マリオ「オ"ォウ!!…すまない。」 キノピオ「今更おせんだよ!!!」 キノピオは何度もマリオを殴った。 486 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 22:52:49.36 ID:vbw6cNSZO キノピオ「死ねよ!!死ねよ!!」 マリオ「オォオ…マンマミーア…」 キノピオ「粕がww粕がwwwヒャハハハハwwww」 グキッ!と何かが壊れる音がした。 マリオ「ぉああああああ"!」 キノピオ「一生悶えてろ。」 キノピオは薬を吸いながらどこかへ消えた。 胸の当たりが尋常でなく痛い。 やばい、これはやばいと感じた俺は胸を押さえながら家に帰り、 ピーチの財布にあった少ない金をもって病院へ向かった。 488 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 22:59:35.44 ID:vbw6cNSZO 医者「肋骨にヒビが入っています。早く手術をしたほうがいい。」 そう言われたが診察費と痛み止めの薬だけで所持金は空になった。 俺は雪の上を苦しみながら家に帰った。 マリオ「フォウ…フォウ…」 ヨッシー「でってぃう。」 マリオ「心配するな…大丈夫だ。」 マリオ「そうだ明日はクリスマスイブだ。     ヨッシー、久し振りに散歩に行こう。夜のパレードは楽しいぞ。」 ヨッシー「でってぃう!」 マリオ「嬉しいか、俺も明日はファイアフラワーでも町で売ってみるかな。     それで金が入ったらお前にご馳走してやる。約束だ。」 もう最後かもしれないから。 491 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:03:20.69 ID:vbw6cNSZO マリオ「ぉああああ"!マンマミーアアアアアアア!!!!」 その夜は痛みで何度も起きた。 その度に痛み止めを飲んで痛みを紛らわせた。 体が悲鳴をあげている。いつ崩れてもおかしくない状態だ。 頼む明日の夜までは持ってくれ。 496 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:10:10.64 ID:vbw6cNSZO ルイージ「明日の21:00からは我が社のゲーム産業部門の開業セレモニーだ。       皆よくここまで頑張ってくれた、心から礼を言う。乾杯。」 前夜祭の会場を飛び交う社員の喜びの声。 明日はこの国の歴史が動く日なのだ。 ルイージ「テレビ局の生中継で全世界へ放送される。一堂明日は楽しんでくれ。」 会場からは声援が沸き起こった。 ルイージは明日は人生最高クリスマスになることだろうと思っている。 498 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:13:44.14 ID:vbw6cNSZO キノピオ「お前らは…」 DQNキノコ1「へへ、遂に見つけたぜw」 キノピオ「まて…やめろ…」 DQNキノコ1「かかれええ!!!」 DQNキノコ2〜50「ぅおおおおおお!!!」 キノピオ「ああ…あ…あぁあ…!」 キノピオの悲鳴が夜空に響いた。 500 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:22:49.80 ID:vbw6cNSZO 翌朝マリオは作りかけのマフラーを首に巻きポケットに写真を入れ、 ファイアフラワーをいくつか持ってヨッシーと共に家を出た。 ファイアフラワーは衝撃を加えると発火するので危ないのだが、 普段はとても暖かくこの時期には何気に需要が高い。 小遣い程度にはなるだろうと思い売る事にしたのだ。 マリオ「いくぞヨッシー。」 ヨッシー「でってぃう。」 502 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:24:50.33 ID:vbw6cNSZO さっそく町で小さなお婆さんを見つけた。 マリオ「ファイアフラワーいりませんか?」 キノコ婆さん「ああ…ありがとね…でもお金が無くてねぇ…これでもええかえ?」 お婆さんは朝買ったと思われる骨付き肉をくれた。 マリオ「いいんですか?」 キノコ婆さん「こんなに寒いとは思うとらんかったでの…         家に帰る方が先決じゃわい…ちょうど暖かい物が欲しかったんじゃ。」 マリオ「そうでしたか、ありがとうございます!」 ヨッシー「でってぃう!」 お婆さんはにこやかな表情でその場を去った。 良い事をすると気持ちが良い。冬の風の中でも温もりはしっかりある。 それは何より大事な温もりなのかもしれない。 508 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:31:22.48 ID:vbw6cNSZO 出会いとは突然訪れるものだ。 邂逅といったところか、次に会ったのはまさかのクッパだった。 クッパ「マリオか…」 おかしい、元気がない。以前のあいつなら俺に殴りかかってくるはずだ。 彼は今の俺と同じ目をしていた。 クッパ「はは、何も無くなっちまった。」 マリオ「俺もだ。」 俺達は公園のベンチに座って話していた。 ゲームの中で宿敵であり、現実では天敵であった二人が今は同じ境遇にある。 運命とは不思議なカラクリでできているみたいだ。 懐かしい話やゲームの話を沢山した。 ただあの事件だけには触れなかった。 彼なりの思いやりだろうか。 517 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:39:18.12 ID:vbw6cNSZO ヨッシー「でってぃう。」 クッパ「おめえはでかくなったなぁ。俺様程じゃないがな。」 マリオ「その内超えるさ。ははは。」 そんなつまらない話が今は楽しい。真剣な話なんてしたくない。 クッパ「ぐぅう…」 マリオ「腹が減ったのか。」 俺はキノコ婆さんにもらった肉をあげるとクッパは一口で食った。 その後彼は手を差し延べてきた。俺が手を握ると彼は手を大きく振って握手をした。 クッパ「おめえは今日から親友だぜ相棒。」 マリオ「ははは、悪くない。昔のファンがいたら度肝を抜かすだろうな。     マリオRPGみたいだってな。」 クッパ「そんなゲームもあったな、ガハハハ。」 俺達は少しだけ大きくなった気分で町を歩いた。 523 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:47:45.80 ID:vbw6cNSZO クッパ「そういや、ピーチを見て無いか。」 唐突な質問は心臓に悪かった。ビクッとしたがなんとか誤魔化した。 マリオ「え?あぁ…どうしたんだ…俺は見て無いなぁ…。」 俺はつい首に巻いているマフラーを竦めそうになった。白状したら確実に殺されるだろう。 世渡りの為の口実を作る嘘を付いた。 一番いけない事なのだが、俺はこれ以上彼が弱る姿を見たくない。 クッパ「そうか…いや、なんでもないのだ。気にしないでくれ。」 クッパ「俺様達は今でもラブラブやっているぞ、ガハハハハハ。羨ましいか。」 今更哀れみたくは無いがあまりに可哀相だった。 白状すれば楽になれる、しかし言ってはならないのだ。 知っているより知らない方がいいことは沢山ある。 俺もそうだった。 532 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/26(日) 23:58:43.42 ID:vbw6cNSZO 俺達は昼頃まで時々休んでは歩き続けた。 途中公園で冬の木の実をみつけたりするとヨッシーに食べさせた。 ヨッシーはまだまだ食べ足りない様子だ。 その時公園のフェンスに何か人影をみつけた。 ワルイージ「こんな所で寝てたのね…キノピオ君。        そろそろ薬も染みて来た頃だし出荷にはいいころかな。」 キノピオが倒れていた。誰かがキノピオの手をひっぱって連れて行こうとしている。 悪い奴だと言う事は直感的に分かった。 クッパ「あの野郎はワルイージだ!     あいつに連れて行かれたら最後、死ぬまで薬漬けにされて売りとばされる。」 マリオ「そうはさせない!」 俺は奴の方へ走った。 ワルイージ「!?まずい…とんずらするぞ!」 マリオ「クッパとヨッシーは奴を捕まえてくれ!俺はキノピオを!」 クッパ「分かったぜ!」 ヨッシー「でってぃう!」 俺達は冬風を切って走り出した。 537 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 00:03:04.07 ID:Y8UzPYptO ワルイージ「ぅわわわわ!」 クッパ「逃がさねぇ!突出ろボボン!」 ワルイージ「あぁあ!"」 ヨッシー「クルリンハー!クルリンハー!」 ワルイージ「オオオ…」 クッパ「トドメだ!ドリルクロー!」 ワルイージ「ノォオオオオ!!!」 クッパ「俺様はこいつを警察に連れていく。マリオに伝えといてくれ。」 ヨッシー「でってぃう!」 542 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 00:09:05.43 ID:Y8UzPYptO マリオ「キノピオ!キノピオ!」 キノピオ「…」 マリオ「大変だ…体が冷たい…」 俺はキノピオにいくつもファイアフラワーをくっつけた。 そして風に当たりにくい静かな影に彼の身を隠した。 生きててくれ。 ヨッシー「でってぃう!」 マリオ「そうか…クッパは警察署か、暫くかかりそうだな。」 俺は夕方までクッパを待ったが結局帰ってこなかった。 やはり事情聴取が長引いているのだろう。 先に行くと張り紙を残して俺は町中へ向かった。 551 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 00:17:13.93 ID:Y8UzPYptO 夜になって町にポツポツと灯が燈り始めた。 この一つ一つに命があり、この一つ一つに幸せがあるのだと、俺は考えるのだった。 町に来た理由はクリスマスに発売されるゲームを一通り確認したかったからだ。 俺は少しレトロな感じの木製のゲームショップへ入って行った。 店内は装飾されクリスマスソングが流れていかにもと言った感じだ。 やはり自分のゲームはカートの中で眠っていた。 クリスマスセールで100円になってさえ売れない現状をみると、 過去の栄光に浸る気にもなれない。 556 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 00:22:54.83 ID:Y8UzPYptO マリオ「あの娘は…」 PS5のゲーム売り場で小さなキノコが家族連れの客を見る度におどおどしている。 マリオ「家族とはぐれたんだろうか。」 俺がその子に話しかけようとしたとき、店内から叫び声が聞こえた。 店員「泥棒!誰か捕まえて!」 ドボロー「へっへん!オレッチが捕まるわけねぇよ!」 ドスッ!という音がして泥棒は俺にぶつかった。 その直後ファイアフラワーが火を放ち、店は炎上した。 ドボロー「ひいい!し、知らねえぞ、オレは知らねえぞ!」ヒヒューン! 泥棒はものすごい逃げ足で逃げた。 火が店内に広がる、俺とヨッシーもすぐさま店から逃げたした。 565 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 00:29:09.33 ID:Y8UzPYptO 店を出ると何故かルイージがいた。 ルイージ「最後の息抜きに町を歩いて見たらこの有り様だ…放火犯はお前か。」 マリオ「違う…泥棒が俺にぶつかって…」 ルイージ「そのファイアフラワーはなんだ。あまりふざけるな、重罪だぞ。」 マリオ「…すまない。」 母キノコ「きゃあああ!ウチの娘がまだ中に!」 マリオ「!」 出来過ぎたような事件が起こってしまった。 しかしどう目を逸らそうが現実はいつもそこにある。俺は何度も学んできた。 マリオ「ルイージ!行くぞ!」 ルイージ「何を言ってる犯人。もう無理だ諦めろ。」 バシッ!と音がした。マリオはルイージを殴っていた。 575 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 00:38:57.04 ID:Y8UzPYptO マリオ「何諦めてんだ!でっかいもん見すぎて大切な物まで忘れたのか!」 ルイージ「何をいっている。」 マリオ「今命を救えるのは俺達しかいないんだぞ!」 ルイージ「何億人の一人だ、たかが一人に危険を払う事はない。」 マリオ「たかがだと…。子供が泣いてるんだぞ。俺は耐えられない。     頼む!力を貸してくれ…!この通りだ!」 マリオは雪に土下座をした。金を借りたあの日とは全く違う熱意や説得力があった。 紛れもない正義だ。目の前の炎より熱い情熱。 ルイージは深い感銘を受けたのだ、かつて尊敬して止まなかった兄の姿だ。 兄さんが帰ってきた。 ルイージ「兄さん…。」 何年かぶりにルイージはその言葉を口にした。 ルイージ「いいだろう。一夜限りのマリオブラザーズの復活だ!」 577 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 00:40:22.51 ID:y44WfMJLO 一夜限りのマリオブラザーズ・・・ 582 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 00:49:19.07 ID:Y8UzPYptO 二人は店内を走り抜けた。 目指すは二階PS5コーナーだ。 マリオ「フォッ!」 ルイージ「ヤッフゥウウ!」 さすがにジャンプは厳しかったが、走る事は出来る。 俺は力の限り走った。彼女は必ず助け出す。 マリオ「オォウ!」 階段に差し掛かった時足場が崩れ落下しそうになった、 すぐさまルイージが手を握って助けてくれた。 ルイージは親指を立た。俺は少し笑顔になった。炎を潜り潜りその先に彼女はいた。 幼女キノコ「ふぇええん!ママァアア!」 マリオ「捕まれ。」 幼女キノコ「うん…グシュン。」 ルイージが得意のトルネード火を払いマリオは幼女キノコを抱えて店内から駆け出した。 その姿は誇り高く勇敢な勇者達を彷彿とさせ店の外からは拍手が沸き起こった。