588 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 00:59:59.36 ID:Y8UzPYptO 拍手雨の中から国王が出て来た。 クリスマスの事件とはここまで大事になるものなのかと驚く気持ちが大きかった。 国王「マリオという者はおるか。」 マリオ「あ…はい。」 国王「そなたがマリオか。自分のやった事は分かっておるな。そなたには懲役…」 幼女キノコ「まって!そのおじさんは悪くないの!あたしを助けてくれたの…。」 マリオ「…!」 幼女キノコ「だからお願い…許してあげて…」 母キノコ「こら!何言ってるの!すみませんねウチの娘が変な事言っちゃって。」 国王「いや…その娘に甘んじて罪を軽くはしてやろう。     しかしマリオよ、貴様にはこの町を出て行ってもらう。良いな?」 マリオ「…。」 ルイージ(マリオ……) マリオは全てを受け入れた。何故か彼は満足そうな目をしていた。 マリオ「仕方ない。行くぞヨッシー。」 ルイージ「兄さん!」 マリオは振り向かなかった。 595 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 01:09:18.35 ID:Y8UzPYptO ああ、この町とも自分の家ともお別れか、 長い間世話になったな、これからどうしよう。俺に何がある。 幼女キノコ「待って!」 町を出ようと決意した時あの娘が走ってきた。 マリオ「どうしたんだい?」 幼女キノコ「おじさん行っちゃうの…?」 マリオ「すまないね。おじさんはもう行かなきゃならないんだ。」 幼女キノコ「やだ行かないで…あたし寂しいよぉ…。」 どうしても不可思議だった。俺には何が寂しいのか分からなかった。 やはり歳の差だろうか。 いろいろ迷った結果彼女を撫でる事にした。そうだそれがいい。 マリオ「よしよし。君が大きくなったらまた会いに来てあげるよ。     それまで何があっても諦めない事、いいね?」 幼女キノコ「分かった…グシュン」 マリオ「キノコの神様はね。     最後まで諦めなかった娘に幸せをくれるんだよ。     忘れないでくれ。」 596 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 01:11:46.77 ID:IyotcepJ0 なんだか泣けてくる… 600 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 01:20:25.43 ID:Y8UzPYptO そう言ってその娘に顔が近付いた時彼女は笑った。 幼女キノコ「えへへ///おじさんサンタさんみたい///」 髭や髪に雪が積っている。少女の目にはそれがサンタに見えたのだ。 マリオ「そうだ…今度会う時、おじさんが何かお願い事を叶えてあげよう。」 幼女キノコ「ホント!?///」 マリオ「ああ…本当だよ。お願い事を言ってごらん。」 幼女キノコ「え〜と…う〜ん…え〜とねえ…あたし…」 幼女キノコ「お父さんが欲しい!」 マリオ「!」 そうか。そうだったか。君もなのか。 あの店で少女にあってからの全てが繋がった。 俺は目が潤むのを隠せなかった。 幼女キノコ「おじさん大丈夫…?」 彼女はなんと純粋なんだ。俺は涙を堪えるので必至だった。 604 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 01:29:29.26 ID:Y8UzPYptO 涙腺が熱い。 彼女は今までずっとわがままも言わずにそれを欲しがっていたのか。 そうか彼女は立派だ。 マリオ「ああ…大丈夫だ。お父さんはきっと現われるよ。君は必ず幸せになる。」 幼女キノコ「ありがとう///おじさん大好き///」 マリオ「よしよし…ありがとうね。     そろそろ出発しなくてはならない。すまないが門出の時間だ。」 幼女キノコ「分かった…また会えるよね?」 マリオ「もちろんさ。」 あの笑顔は人生で一番良い笑顔だったかもしれない。 作り物ではない、ピーチと同じ満面の笑顔だった。彼女とマリオの笑みが重なった。 幼女キノコ「またねおじさん!」 マリオ「ヨッシー。今度こそ出発だ。」 ヨッシー「でってぃう。」 俺は町を後にした。思い出はここへ置いて行く。旅の始まりだ。 676 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 18:23:55.89 ID:Y8UzPYptO ルイージ「あれは…クッパか…?しめたぞ。」 ははは、兄さんをここで終わらせはしない。 ルイージ「おいクッパ。」 クッパ「なんだルイージか…。マリオは何処にいる。」 ルイージ「マリオは町を追放された。」 クッパ「何だと!!!」 ルイージ「そこで君に提案がある…ごにょごにょ。」 クッパ「ああ…そうするしか無いなら俺も全力を掛けるぜ。」 ルイージ「しくじるなよ。しくじったら俺の財力を以て…後は分かるな。」 クッパ「全く怖い弟さんだな…。」 677 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 18:24:43.38 ID:Y8UzPYptO PM21:00 ルイージ「今日は沢山のゲストのみなさんに起こしいただき大変感謝しております。」 ルイージ「今日は明日までショーや踊りを思う存分お楽しみください!」 会場から拍手歓声が沸き起こる。 「He is a Luigi!」 「You are Luigi!」 ルイージに浴びせられる賛美の声。ルイージはついにここまで登り詰めた。 ルイージ「聖なるクリスマスイブに乾杯!!」 678 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 18:26:36.45 ID:Y8UzPYptO かなり歩いたな。こんな町外に一軒家がある。 マリオ達は魅かれるように中へ入っていった。 マリオ「誰かいますか。」 ノコ爺「こんな日にお客様とは珍しい。迷い人かの。     ワシは神宮司ノコ舞龍、ノコ爺と読んでくれ。ま、座りなさい。」 マリオ「ありがとうございますノコ爺さん。」 不幸中の幸いか良い人に出会えたものだ。 ノコ爺「その恐竜はお前のペットか?暖かいスープが出来ておる。飲むがいい。」 ヨッシー「でってぃう///」 ヨッシーはもの凄い勢いでスープを飲んだ。 ノコ爺「相当腹が減っておったようじゃの…。」 マリオ「ノコ爺さん、あの壁の女性は?」 何故だか懐かしくも感じるこの部屋を眺めていると壁の写真が目に止まった。 まさかと思いノコ爺に訪ねたのだ。 679 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 18:28:59.39 ID:Y8UzPYptO ノコ爺「ワシは医者をしておってな、彼女は昔の患者じゃ。」 ああ、運命とは実に良く出来ている。 なんとも巧妙で精密な設計だ、いたって素晴らしい。 俺は胸が熱くなるのを押さえてポケットからあの指輪を取り出した。 マリオ「すみません、この指輪を写真の隣りに置いといてもらえませんか。」 ノコ爺「何故そのような事を。」 マリオ「この指輪はここにあるべきなんです。」 あやつ真剣な目をしておる。 おや、この目は何処かで…。 まぁよい、願いは聞いてやろう。 ノコ爺「これで良いのか。」 マリオ「ありがとうございます。何があっても必ず隣りに置いといてあげてください。」 ノコ爺「はいよ。」 老人はそう言って深く頷いた。長い人生経験からくる包容力は人を引きつける。 681 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 18:31:01.96 ID:Y8UzPYptO 暖炉の火がパチパチと揺れている。 マリオ「すみませんが俺には事情があります、     あまり長居する訳にはいけません、お世話になりました。」 ノコ爺「もう行くのか。もし旅の途中なら一夜留まってもいいのじゃぞ。」 マリオ「いえ、俺は大丈夫です。」 マリオは笑ってみせた。少し間を置いてノコ爺が喋り出した。 ノコ爺「…そうか。ならば行きなさい。そなたに神の御加護があらん事を祈る。」 あやつ、覚悟しておる。 ワシに早まる理由を聞く義理はないが、彼にはまだ早い、それはあまりに早い。 ノコ爺はマリオの心内を悟っていた。 ノコ爺「まだ時間ではないが、メリークリスマス。」 マリオ「メリークリスマス。」 そう挨拶を交わし、二人は別れた。 その頃二階の暗い部屋では王冠が月に照らされていた、 静かに彼を見守っている確かな証がそこにはあったがとうとう気付く事は無かった。 682 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 18:32:56.92 ID:Y8UzPYptO キノピオ「はぁ…はぁ…このフラワーはマリオが…。」 キノピオ「町の人はあいつが町を追放されたって言ってやがる。」 キノピオはマリオの足跡を必至で探したが分からない。 しかしあてはあったのだ、マリオが行くのはあそこしかない。 あいつがいつか大切だと言ってやがった場所。 キノピオ「すまねぇ…すまねぇ…!今行くからよ!死ぬんじゃねぇぞ!」 キノピオは雪を掻き分けて走り出した。唯一の思い出を頼りに彼の軌跡を辿った。 683 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 18:36:15.83 ID:Y8UzPYptO 当ても無く雪の道を彷徨う途中エロ本を見掛けたが、 目もくれなかった、彼のキノコは既に息絶えていたのだ。 そう言えば胸が痛い。痛み止めが切れて来たのか。俺はその場に倒れた。 雪が美味しい、何を食っても美味いのだ、滑稽なまでに哀れである。 憐憫の情さえ甚だしい程に哀れだ。その時彼の声が心に響いて来た。 キノ五郎「おいマリオ、諦めてどうする。」 マリオ「キノ五郎さん…。すみませんコーヒーの借り返せそうにないっす。」 キノ五郎さんの隣りには美しい女性がいた。 キノ五郎「俺はお前が羨ましかった。       どんどん幸せになってくお前をみては指を咥えて見ていたさ。       だが俺はもう充分幸せだ。おめえが背負う事はない。       しかし逃げるのはお前らしくない。       俺の後輩ならちゃんと前をみろ、キノコの神様のお告げを忘れたか。」 俺は立ち上がった。得体の知れない力に後押しされ、生にしがみついた。 686 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 18:37:55.51 ID:Y8UzPYptO マリオ「キノ五郎さん…!」 キノ五郎「お前は立派だ…だがな、消えるのはまだ早えだろ。       死ぬのなら最後まで抗え、最後まで闘え。       いつまでたっても俺はお前の味方だ。」 そう言うとキノ五郎さんは俺の中から消えた。 まるで言いそびれた事を全て言ったかのような 満足に満ちた笑顔で彼は本当に空になったのだ。 彼は配管工という地下の仕事で長年を過ごし、 長い長い時を経てようやく空になったのだ。 高い高い世界に彼はいる。眩しく尊い柔らかな光だ。 ありがとうございます。俺頑張るっす。 マリオ「クリスマスの鐘が聞こえる。いくぞヨッシー。」 ヨッシー「でってぃう。」 二人は鐘の呼ぶ方へ歩いた。遠くの町からはパレードの花火が上がっている。 その輝いては消える儚い美徳は心で弾けて消えた。 690 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 18:46:43.18 ID:Y8UzPYptO 暫く歩いた所で俺達は教会へついた。 昔ゲームの舞台にもなった場所だ。鐘はここから聞こえていた。 マリオ「フォウ…フォウ…ここだ…。」 体はもう限界だ。何をしに来た、ここに何がある。 とにかく寒い、マリオは最後のファイアフラワーを祭壇に投げ出した。 すると祭壇の燃え盛る炎が教会を照らした。 マリオ「これは……。」 何色にも色分けされたステンドグラスで出来た窓が 光を反射して当たりは一面虹色に包まれた。 神々しい輝きが二人を照らしている。 するとマリオは祭壇の中心に何か文字が刻まれているのを見つけた。 ―Those who never give up is given happiness― 最後まで諦めなかった者に幸せは与えられる。 時に自らを鼓舞し何度も勇気をくれた教訓だ。 薄れ行く光景の中でさえマリオは笑顔だった。 ああ神よ、ここに居られたか。 体が軽い、痛みが消えてゆく。もうすぐだよピーチ。 692 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 18:47:35.14 ID:m1Z/fiFT0 らめええええええええええええええええ 693 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 18:49:49.49 ID:TT1DXFs5O フォウ! 695 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 18:54:29.79 ID:TT1DXFs5O >>693 やべえ書き込み時間が泣いてる 697 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 18:55:46.41 ID:dO4eAi760 >>693 それなんて奇跡? 696 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 18:54:30.14 ID:WBrIJVQqO パトラッシューー!!! 698 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 18:57:19.35 ID:Y8UzPYptO キノピオ「おっさん!」 マリオ「…キノ…ピオ…?」 キノピオ「死ぬな!おっさん!俺馬鹿だから上手く言えねえけどよ      あんたが居なきゃダメなんだ!」 キノピオ「あんたが…あんたが居なきゃまた俺間違っちまう…。      俺にはおっさんが必要だ、それだけじゃだめのかよ。」 マリオ「お前…。」 漸く分かってくれたか嬉しいぞ。しかしなぁキノピオよ。 力が入らないのだ。許してくれ、人はいつか死ぬ。これだけは絶対的な宿命なのだ。 キノピオ「死ぬのだけが絶対じゃねぇだろ!       死があるんなら生きる事も絶対だろ!生まれて来たんだろ畜生!」 あのキノピオが俺の為に泣いているのか。彼を救いたいが力が入らない。 ヨッシーが心配そうにこちらをみているな。それでも俺の感覚は薄れて行く。 702 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:10:40.17 ID:Y8UzPYptO その時、天井のガラスが崩れ大きな音が響いた。 呆気に取られて振り返ると奴がいた。クッパだ。 クッパ「よお…やっと見つけたぜ。」 キノピオ「それは…ホームランバット!?何をする気だ!」 クッパ「餓鬼は黙って見てろ。」 クッパがマリオにホームランバットを大きく振りかぶった。 キノピオ「止めろー!!!!」 マリオ「ロホホホホォオウ〜!!!!」 カキーン!という壮快な音と共にマリオが空の星のように飛んだ。 ルイージからもらったあいつの新製品だ、あのスマブラの壮快感を貴方にだとよ。 ショック吸収素材だから体に害は無かろう。行け、お前の時代の再来だ。 704 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:11:33.91 ID:Y8UzPYptO ルイージ「時間も早深夜一時、そろそろ本日の最終イベントとさせていただきます。       今から始まる一大イベントにはある有名なゲストをお呼びしております。」 会場がザワザワと騒がしい。 「おい来ねえぞ。」 「ゲストって誰だ。」 等と口々に言い散らす人々。すると天井の吹き抜けから何かが落ちて来た。 ルイージ「…来たか。」 ルイージの口元が小さく笑った。 706 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:12:53.89 ID:Y8UzPYptO ―いいかクッパやつは必ず教会にいる。   あそこは奴が小さい頃父親を葬儀した場所だ。   奴はそこを死に場所に選ぶだろう。― ―これをもっていけ、対ショック性ホームランバットだ。   しかし飛距離はあの壮快感を損ねない。   夜0:00を過ぎたら奴を全力でここへ打て。失敗は許さない。― ―分かった。それがあいつの未来なら俺様がキッカケを作ってやる。あいつは親友だ。― ―任せたぞ。― ルイージ「遅かったな。」 マリオ「ここは…。」 多くの観客を前にマリオが立っていた。 708 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:15:45.18 ID:Y8UzPYptO ルイージ「デイジー、あれを持ってこい。」 デイジー「かしこまりました。」 するとその美女は奥からMと刻まれた赤い帽子を持って来て俺に被せた。 その瞬間会場のゲスト達やゲーム業界著名人、 テレビを見ていたコアなゲームファンは彼が何者であるか気付いていた。 永遠の主人公。マリオだ、赤が帰って来た。 「He is a Mario!」 「You are Mario!」 会場からは声援が沸き起こった。 拍手に後押しされて子供の頃夢に見たヒーローが帰って来た。 ルイージ(おい…テレビ来てんだぞ。何か喋れ。) マリオ(まだ混乱している…何を言ったら。) ルイージ(思う事なんでもいいから喋れ早く。この物語りの主役はお前だ。) マリオは静かにマイクを握った。 709 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:17:45.50 ID:Y8UzPYptO 痛みや感覚は殆ど無かった。最後の力だ。 マリオ「俺は今生きている。ここにいる。それ故に幸せや不幸を感じる。     それはやはり俺が一人ではなく貴方達がいるから分かる事なのだ。」 いきなり何を言い出すのかと会場がざわめいた。 マリオ「俺は自分の居場所を裏切った。何度許を請うても意味は無いだろう。」 マリオ「しかし、大切な人達がいた。ただその為に頑張ろうと思い、今に至ったのだ。」 会場からはざわめきが絶えない。マリオは続けた。 710 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:20:29.07 ID:Y8UzPYptO その光景は世界規模で放送されていた。 幼女キノコ「ふわあぁ…」 母キノコ「貴方まだ起きてたの。もう寝なさい。」 幼女キノコ「だってサンタさんに会いたいんだもん。        良い娘にしてたらクリスマスには来るんだもん。」 TV「例えば家族の誰かが足りない時、何を思いますか。    悲しいだけではない、哀愁や切なさ、苦しみを背負うでしょう。」 幼女キノコ「あれ!サンタのおじさんだ!」 少女には言っていることは分からなかったが、 ただマリオの言葉は彼女の最も深い所で琴線に触れていた。 マリオ「しかし笑顔まで無くした時、それは本当の悲しみになる。     だから我々は笑うのだ。無邪気な心を弾ませるのだ。     子供のように純粋で柔らかな笑顔は人を幸せにする。」 少女はTVに釘付けだった。幼いながらに泣いていた。 涙の意味を知る筈は無く、ただ心のままに泣いたのだ。 711 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:26:31.35 ID:Y8UzPYptO 町外れ、聖なるクリスマスの日にラジオを聞く老人が一人。 ノコ爺「この声は…あやつか。」 ラジオ「沢山の人に出会った。     出会いがあれば別れもあるといったように。     二度と会えない人もいるだろう。」 ラジオ「しかし、諦めてはならない。大切なのは願う気持ちと諦めない精神だ。     信じ続ければ夢は叶う。無くした人を忘れないで欲しい。     彼等は皆貴方達を見ている。いつまでも最愛の味方なのだ。」 ノコ爺は思い返した。 自分が見て来た沢山の患者や孤児達、それに帰って来なくなったあの孤児キノコ。 沢山の死をみてきたがそれぞれに物語りがあり歴史があった。 ノコ爺「明日は久し振りに町に行ってみるかの。     変わった世界を受け入れるのはワシの使命やもしれん。     この歳になって青から真を学ぶとはな。     フォッフォッ世界はまだまだ楽しめそうじゃわい。」 715 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:42:45.54 ID:Y8UzPYptO キノコフスキーは町角のモニターに映る彼を見ていた。 マリオ「歌がある。生きる歌だ。歌は時には人を励まし、時には人を悲しくする。」 マリオ「言葉では表せない感情を歌で伝える詩人がいた。     境遇以上の運命を感じたがもう彼と会う事は無かった。     俺はあの歌を忘れない。どうか町でみかけたら歌を聞いてやってくれ。」 キノコフスキーの心に火が付いた。 書かなくては。今生きている歌が目の前にある。 詩だ…この詩が欲しかったんだ。これこそが詩だ。ありがとう私の恩人よ。 後に彼が執筆した詩集「赤の詩」は空前のベストセラーとなり、 キノコ王国の偉大な詩人キノコフスキーとして永遠に名を残す事になる。 720 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:48:32.75 ID:TT1DXFs5O アメイジング・グレイス凄すぎだろ 721 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 19:53:07.70 ID:Y8UzPYptO マリオ「俺にも短い間だが家族がいた。しかし今はいるのはペットと大切な弟ルイージだ。」 ルイージ「兄さん…。」 マリオ「今更あの業界には戻れないが家族の力にはなりたい、どうか守りたいのだ。     この何も無い哀れな男の願いだ。」 マリオ「世界はいがみ合っている。金が欲しくて愛が足りない、花束が無い。     笑顔がない。それじゃあ何がある、やはり争いしかない。」 マリオ「世界が一つになるキッカケは何処にでもある筈だ、まずは家族から、     そして友人、愛人へとまごころを尽くせば笑顔になれる。     そして俺はこの会場や世界の皆が幸せになる日を誰より夢見て止まない。     今も昔もいつか誰かが夢見たように。     もう明日はすぐそこだと俺は信じている。いいか皆…」 マリオは大きく息を吸い込んだ。 マリオ「キノコの神様は最後まで諦めなかった者に幸せを与える。」 725 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 20:06:26.20 ID:Y8UzPYptO マリオ「愛と笑顔、思いやる気持ち、     諦めない心その全てが一つになった時世界は変わる。     俺は信じています。」 マリオは深々と頭を下げた。 マリオ「こんなつまらない男の話を聞いていただき本当にありがとうございます。     俺は幸者です。」 マリオ「世界の皆様、メリークリスマス。」 会場から歓声が沸き上がる。 心を打たれた人々が叫び声を上げてマリオに最高の尊敬と称賛を与える。 この日は世界中が沸いていた。最も美しく最も誇り高く最も暖かいクリスマス。 世界に愛と花束が授与された日だ。 拍手と歓声がこの星を包んでいる。 ルイージ「それでこそ俺が憧れて止まなかった赤い帽子と髭のヒーロー、マリオだ。       愛すべき俺の兄だ。本当にお疲れ様。メリークリスマス。」 ルイージ「…兄…さん…?」 次の瞬間会場が会場が静寂に包まれた。 729 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 20:09:08.36 ID:weR0z6P20 もう・・・だめなのか・・・ 733 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 20:11:31.71 ID:LEbNic5uO マリオ…… 735 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 20:19:35.08 ID:Y8UzPYptO 音も無くマリオはその場に倒れた。 静かにそして優しく。あの日と同じ雨の音のように。会場に冷たく響いた。 ルイージ「兄さん!」 すぐさまルイージが上着を捨ててマリオをおぶった。 しかしルイージは走ろうとはしなかった。 彼に触れた時、全てを悟っていたからだ。 デイジーはすぐさま医者に電話をし救急車を読んだ。 ルイージはゆっくりとそして噛み締めるように一段一段ホールの階段を降りた。 人の塊が左右に開いて花道が出来上がった。 ルイージはその道をゆっくりと進んで行く。 決して誰も喋らず、誰一人として二人から目を放さなかった。 その壮大で勇壮な光景の中を一人突進む彼は 戦場で傷付いた仲間を運ぶ兵士のようだった。 えも言えぬ雄々しさと偉大な雰囲気が会場から溢れている。 やがてマリオは救急車で運ばれた。あれは彼を乗せた箱船だった。 デイジー「貴方…。」 ルイージ「すまない、一人にしてくれ。」 ルイージはエレベーターで部屋へと帰った。 その後に緊張が去った会場の人々全てが例外無く泣き崩れたとデイジーは語る。 736 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 20:27:41.14 ID:Y8UzPYptO ルイージ「…。」 ルイージは黙ったまま部屋の大きな自画像の前に立っていた。 月が雲から顔を出しては彼の背中を照らしている。 再び月が雲に隠れた時彼は渾身の力で自画像を殴った。 パリンと音を立てて保護ガラスにヒビが入り、ルイージの手からは血が流れている。 ―ルイージよ。発展と豊かさは違う。― 国王の言葉がルイージ脳裏を過ぎった。 いつも強くて野心家でいて負けず嫌いのルイージがこの日初めて泣いた。 月がルイージの背中と拳の血と砕けた自画像のコントラストを映している。 ルイージ「兄さん…!兄さん…!」 静まり返ったクリスマスの夜にルイージは膝を付いて泣き崩れた。 737 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 20:31:34.36 ID:y44WfMJLO ピーチの元へ行ったのか・・・ 738 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 20:33:02.59 ID:Y8UzPYptO ピーチ「おかえり。」 マリオ「ただいま。」 マリオ「今日は疲れた。長い長い一日だった。」 ピーチ「お疲れ様。よしよし…。」 マリオはまるで子供のようにピーチにうずくまって眠った。 今までで一番安心した表情をしていた。 ピーチは彼を優しくそっと見据えて頭を撫でている。 空には愛が溢れていた。いつかと同じ夢の色。 ピーチ「メリークリスマス。」 彼女はにっこりハニカンだ。 740 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 20:39:14.77 ID:Y8UzPYptO 翌朝ルイージはソファーに座り机を眺めていた。 あの後病院でマリオのポケットから出て来たという写真が飾ってある。 その中で皆が幸せそうな顔をしてこちらを見ているのだ。 彼等は確かにここにいるなんてつまらない事を考えては窓の外を眺めていた。 ルイージ「兄さん…。」 あの後会場の人達は朝になるまで帰らなかったそうだ。 今日はゲーム部門のオープン一日目、俺は覚悟を決めてデスクへ向かった。 744 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 20:46:47.45 ID:Y8UzPYptO やがてキノコ王国に春が来た。 変わった事と言えば、まずいろんな店のゲーム売り場のカートから 兄さんのゲームが消えた事かな。 あれからレトロゲームブームが始まって何処にも在庫は無いみたいだ。 ある時は200円だった兄さんの思い出はいまや値段をつけられない宝になっている。 それにいろんな町が売り場を分かち合う事にしたみたいだ。 関税や独占価格の廃止が行われ世界は一つになった。 家族を失った子は必ず誰かが助けている。 仕事も相応の努力があれば誰でも受け入れる世界だ。 兄さんのあの言葉は予想以上に影響を与えたみたいだ。 兄さん、世界が変わったんだよ。 747 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 20:56:29.08 ID:Y8UzPYptO ノコ爺「お前たち、そろそろ飯じゃ。」 孤児キノコ達「は〜い♪」 彼等は今日も笑っている。 クッパ「ヨッシー、俺様にみたいに大きくなれよ。」 ヨッシー「でってぃう!」 彼等は今日も育まれている。 キノピオ「おまえら、川のゴミは全部拾ったか。」 DQNキノコ達「おっす!」 彼等は今日も守っている。 幼女キノコ「パパ…?」 父キノコ「待たせたねごめんね。      お父さんはお母さんとやり直す事にしたよ。      今日からは三人だ。」 彼等は今日も生きている。 753 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/27(月) 21:13:11.57 ID:Y8UzPYptO 風の暖かい頃、スーツを着たその男は本を手に思いに耽っていた。 キノコフスキー著「赤の詩」 ―赤は情熱の赤、怒りの赤、血潮の赤、愛情の赤― ―赤はやがて混ざりあいまどろみ、やがて人を動かす力になる― ―生きる力の色― ―赤は世界を変える― ―キノコの神様は最後まで諦めなかった者に幸せを与える― ―赤は世界を包み花束を、人々を包み笑顔を与える― ―キノコに幸あれ、世界に愛あれ― ―赤の想いよ永遠に― 彼を揺すぶる春風は世界へと吹き抜けていった。 〜マリオ「ピーチ姫の…」完〜